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比較検討における意思決定マトリクスの活用と考え方

比較検討における意思決定マトリクスの活用と考え方

はじめに

 最近の業務で、ソフト開発における運用の改善をしており、複数の改善案から一つを選択しなければならない場面がありました。その際に、比較検討について気づいたことや考えたことがあったので、記事に残しておきます。

議論の内容を可視化する

 比較検討に限らず仕事全般で言えることですが、例えば自分一人で何かを検討する時に頭の中だけで考え事をしたり、あるいは複数人で何かを検討する時に口頭でのやり取りだけで話を進めようとしたりすると、空中戦が続いて議論が先に進まないことがあります。

自分はこういった状況になり得る場合に、ホワイトボードやPCのメモを用意して、議論の内容を可視化するようにしています。議論した内容を何かに書き起こしておくことで、それを一旦忘れて他のことを考えられますし、あるいは後からその内容に戻って続きから考えられます。

 特に比較検討においては、複数の案に対して様々な観点から評価をするため考えることが多く、思考を整理するという意味でも可視化は極めて有効な手段です。

 本記事では、比較検討において具体的にどのように議論の内容を可視化して、どのように評価観点を洗い出し、何を注意しなければならないのかを整理していきたいと思います。

点数表(星取表)のメリット・デメリット

 それぞれの案に対して評価観点を設けて検討しようとなった時に思いつきやすいツールの一つに、以下のような点数表(星取表)があると思います。

評価観点案A案B案C
観点1242
観点2522
観点3345
合計10109

各案に対して観点ごとに点数をつけて評価する手法で、定性的で比べにくい観点を点数として定量化することで、比較をしやすくなる強みがあります。

 一方で、このような点数表には問題点もあります。評価観点は全てが同じ重要性を持つわけではなく、中には意思決定を大きく左右する重要なものもあれば、そこまで重要でないものもあり、そういった部分が考慮されていません。

例えば、上の表では案Aと案Bの合計点がともに10点ですが、どの観点が大事なのかという考えが不足しており、「同じ10点だからどちらでもよい」とは言えません。 実は観点3が最も大事で、合計点は最も低い案Cが最も望ましい選択になる、という可能性もあります。

つまり、各観点の合計値を出して大小を比べただけでは、意思決定の材料として不足していると言わざるを得ません。

意思決定マトリクスで観点に重みづけをする

 そこで、点数表に対して評価観点の重みづけを追加した、意思決定マトリクスというツールが役に立ちます。以下のように、各観点の点数に重みを倍率として掛けて点数を算出します。

評価観点重み案A案B案C
観点1×1242
観点2×1522
観点3×3345
合計161819

各観点を点数として定量化するだけでなく、それぞれの観点がどれほど大事なのかという点も倍率として反映することで、より深い洞察を得やすくなる強みがあります。

これにより、例えば「案Cは最初に一度のみ実施するセットアップ操作が大変だけれども、セットアップを完了した後の操作が他の案よりも楽であり、今後長期的に運用することを考えると望ましい」というように、点数表を使った場合よりも深い比較検討がしやすくなります。

評価観点の出し方

 意思決定マトリクスは確かに有用なツールではありますが、ツールを使うことよりも、評価観点として何を抽出するかの方が大事であることは言うまでもありません。

しかし、検討しているものやその特性、組織の状況などによって評価観点は大きく変わるため、観点の出し方に唯一の正解は無く、難しいところではあります。

そのような中でも、多くの場合において有用な考え方はあると思っています。自分の身近な範囲や短い時間軸だけに囚われず、より広い範囲で観点を洗い出すということです。

私の場合を例にすると、今回の比較検討では以下のような観点が上がりました。

  • 関わる人の範囲に関して広く考えて、「チームメンバーに関わること」だけでなく、「外部関係者に関わること」の評価観点も考えた
  • 時間軸に関して広く考えて、「導入にかかる初期コストや工数」だけでなく、「長期的な運用面でのコストや工数」も考えた
  • 導入前後の人の状態に関して考えて、「学習コスト」という観点を設けた

比較検討というものは、最初に何か目的やゴールがあったうえで行われるものではありますが、観点を洗い出す過程でよりAs-Is・To-Beが明確になってくることもあります。

そういった意味でも、評価観点の洗い出しは大変ではあるけれども時間をかける価値のある工程だと思います。

スコープを明確にする

 評価観点を洗い出す際や、各観点に対して評価をする際には、スコープ(適用範囲)を明確にしておかないと正しく議論ができないことがあります。

例えば、「導入対象はここまでをスコープとし、それ以外の部分は今回の評価対象としない(もしくは、別の項目として評価する)」といった前置きが必要になることもあります。

前提が明確になっていないことにより判断がしにくくなる場合もあるので、ある観点に対する判断が難しいなと思ったら、スコープが明確になっているか疑ってみることも有効だと思います。

意思決定の責任は人間にある

 注意しなければならない点として、意思決定マトリクスは比較検討における便利な補助ツールではありますが、「マトリクスの合計点が一番高いから案Aにしよう」というような考えは本質からずれています。

最終的な意思決定の責任はツールではなく人間にあるので、「なぜこの案を選ぶのか」を自分の言葉で説明できる必要があります。

状況に応じた道具を使う

 ここまで意思決定マトリクスを中心として話をしてきましたが、比較検討において、意思決定マトリクスは唯一の手段ではないと考えています。

状況によって他にも様々なアプローチがありますし、そういった情報は先人達の知恵としてインターネットや本に数多く残っています。

一つのツールに囚われず、その場面に合った考え方を選んでいく姿勢も大切だと思います。

さいごに

 今回は、意思決定マトリクスを用いた比較検討の方法や、注意しなければならないことを整理しました。 この記事を読んでくださった方の参考に少しでもなれば幸いです。

私自身、今回の整理を活かして今後も仕事に向き合っていきたいと思います。

以上

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